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Ayakos_Blomster
デンマーク語 で「綾子のお花」という名のブランド、Ayakos Blomsterを主宰する臼庭綾子(うすばあやこ)さんは、「押し花」を制作するアーティストである。押し花というと、子供の頃に本の間に四つ葉のクローバーを挟んで、という貧弱な思い出しかないのが普通だが、臼庭さんの作品を見ると、押し花は立派なアートであるということを認めずにはいられない。額縁に収まったそれは、絵画のようでもあるが、本物の植物を使用していることを考えれば、ある意味絵画を越えているといえるだろう。絵画では表現できない、みずみずしさや自然が育んだ色の鮮やかさ。誰もがため息をもらすに違いない「押し花」がそこにはあるのだ。

子供の頃からガーデニングに接し、好きなことを仕事にしたいと大手百貨店を退職してまでフラワーデザイナーを目指した臼庭さんだが、当初は押し花に地味な印象しか持っていなかったという。ところがある時、ウェディングブーケを押し花にしたプレストブーケと出会う。結婚式で新婦が持つブーケを、感動ごと残すことができそうなその押し花に出会うことで、押し花に対する薄いイメージが強い興味へと変わった臼庭さんは、さっそく押し花教室へと通い、その勢いでプレストブーケの会社へ就職してしまうのである。そこでの約2年間は、幸せな時間を切りとり、押し花として再現するという仕事に大きな充実感をもって励んだらしい。だが、次第に会社という組織の中で淡々とこなす作業に違和感を覚えるようになり、相手の顔を見ずにつくるのではなく、もっとコミュニケーションをとりながら、その人だけのものをつくりあげたい、そんな気持ちに変化していったのだという。そうした中、デンマークにある「日欧文化交流学院」から押し花講師の依頼が舞い込んでくる。この機会を臼庭さんが逃すわけもなく、さっそく会社を退職すると何とデンマークへと向かったのである。チャンスを逃さないこうした身軽さは、自身をさらに高めようとする意欲の表れ。その好奇心の旺盛さには感心させられる。


デンマークでは、押し花講師と学院のスタッフを兼務しながら町のフラワーショップに勤め、さらなる経験を積んだ臼庭さん。デンマークの園芸専門学校であるGartnerskolen Sohusにも入学し、ヨーロピアンスタイルのフラワーデコレーションを学ぶなど、貪欲に技術と知識を得ていったのだ。もちろん押し花も忘れてはいない。ヨーロッパは押し花への認識が日本よりも薄いのだが、薄いがゆえに、彼女のつくる押し花は現地の人たちを惹きつけることになった。語学や文化の違いにとまどっていた臼庭さんにとって、押し花はデンマークの人々と交流するのに欠かせない技術にもなったのである。それは、2002年にデンマークの女王である、マグレーテ二世陛下が町を訪れた際、訪問記念としてマーガレットの押し花額を制作し献上したというエピソードからも窺える。 お客様とのコミュニケーションを密にし、ひとつひとつ心を込めてつくりたいと語る臼庭さん。アンデルセン童話を生んだデンマークの人々の温かな心や優しい気持ちに触れる生活の中で、日本には無い色や雰囲気を学んだ彼女は、作風も以前とはかなり違ってきたのだ語る。現在は日本の社会福祉施設でフラワー講師もしているというから、福祉の進んだデンマークで一番変わったのは、彼女自身の人間性だったのかもしれない。やさしく、思いやりのある臼庭さんらしさは、彼女がつくる押し花へとそのまま受け継がれている。どうもそんな気がする。
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