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東京・四谷に店を構える蔦の家。かつて老舗料亭であった蔦の家は、政財界や各界著名人たちの交流の場であった。現在その料亭は営業していないが、かつて著名人たちに愛された伝統の京華漬、特別な乗客への手土産であった鯖鮨は、約70年の歴史の中で伝統の味として受け継がれ、現在、心のこもった贈答品として、多くの人に愛されている。 |
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昭和12年創業の老舗料亭。
政財界の著名人たちに評判を呼んでいた京華漬が、最上の贈答品となって、
現代に受け継がれる。
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昭和12年に東京四谷で創業した料亭・蔦の家は、政財界をはじめとする各界著名人の贔屓にあずかる有名割烹だった。初代は、日本料理のみならず新しい商品開発にも積極的にチャレンジし、多くの人気商品が誕生した。なかでも客の人気を集め名物となっていたのが、江戸と京都の味を融合した京華漬。現在料亭は営業していないが、心のこもった贈答品として、今日に伝えられている。
京華漬とは、京都で生まれた西京漬を独自の製法で創り上げた逸品。その名前は優美な京都の味と華のお江戸の伝統「醤油味」が融合したことに由来する。
ふつうの西京味噌は白味噌に調味料を加えるのみだが、蔦の家では、京都の最高級の白味噌と2種類の味噌をブレンドし、さらに特製の「秘伝のかえしだれ」を加えて、じっくりと寝かせている。この味噌が芳醇な香りとコクのある味で魚の旨味を引き立て、京華漬の大きな特長となっている。
魚も上質の素材を厳選し、その切り方には伝統の切り技「大名切り」を用いている。通常、魚類はスライスされることがほとんどだが、身を大きく切る大名切りを用いることで、味噌ダレとの愛称を究極まで引き合わせているのだ。さらに味噌ダレの寝かし、漬け込み時間、温度を徹底して管理し、一つ一つを手作業によってガーゼで包み込む。ガーゼは吸湿・保湿性能が高く、素材の水分を絶妙のコンディションに保つ理想的な包材。素材のドリップ(旨み)を逃さず、最高の焼き上がりとなるのだ。こうした手間隙かけた伝統の製法を頑固に守り続けることで、独特の芳醇でコクのある京華漬は今日に伝えられている。
現在は店舗で販売される京華漬。お客様第一を標榜する蔦の家らしく、心のこもった贈答品に欠かせない包装にも、こだわる。ひとつずつ丁寧に漬けた京華漬の風味を大切にし、竹筒や竹すだれ、竹皮で包んでいる。そして、和模様をあしらった美しい化粧箱と包装紙をつけて気持ちをこめるとともに、その頑丈な作りで京華漬の美味しさを保つ。この気配りが、名士たちの上質な手土産として、長く愛されてきた所以だろう。
お客様に育てられてきたという意識を強く持つ蔦の家は、40代〜60代以上の顧客が多い。手土産として愛用する顧客の中には、誰もが知る大物政治家の名前もあるという。最近生産を開始した鯖の棒鮨は、かつて特別な上客にのみお土産として渡されていたもの。京華漬の焼き鯖と有機黒米を使い、西京味噌のコクと酢飯のさっぱりとした風味が評判だ。細部に工夫を凝らした職人技に頼っているため、毎週金曜日にしか生産ができないが、評判を呼び、品薄の状態が続いている。
料亭「蔦の家」は今はないが、時代を墨守し、いまもその逸品を私たちに送り届けてくれる。長い年月をかけて育まれた伝統の味は、かわらず多くの人々に愛されつづけているのだ。
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